起きてしまったのが運の尽きだろう。いや、運の最上級とも言うべきかもしれない。
同じ部屋、同じベッドで眠る彼女の手が自身の秘部をまさぐっている。
う、と苦しそうな彼女の声が響く部屋で、私はどんな顔をすればよかったのだろう。
小さく呻く声が聞こえる。
必死に抑えていても、完全に覚醒した私の脳みそは、火傷しそうな程の熱を生み出す。
美しい女性が、自身を慰めていた。
夢の中だと錯覚するくらいには現実離れした光景に、ぐるぐると思案がめぐる。
溜まっていたのだろうか、何らかの弾みでそういう気持ちになってしまったのだろうか。
出来ることは2つに1つであった。
それは、知らないふりをして彼女の嬌声と隣で感じる熱を思い出として残すか、その行為を手伝うか、だ。
私が手伝おうか、と声を掛ければ彼女と私の関係は良くも悪くも変わるかもしれない。
そんな選択を迷っているうちに、ふるふると達しそうな、苦しそうな声が部屋を満たす。
私は、どちらの後悔が怖いのかと脳みそに問えばもちろん答えは1つだった。
当初の画策では、手伝おうか、と声を掛けてあたかも善人のふりをして彼女の自慰を手伝う事だっただろう。
でも、そんな理性的な考えが吹っ飛ぶほどに彼女の嬌声が私の理性を壊したのだ。
私は、ふうふうと吐く息を誤魔化す事も出来ず、がしりと彼女の細い腕を掴む。
そのまま彼女の秘部を顕にさせる為に、ぐ、と足を折っても抵抗を見せない為、私は誘われていたのかと錯覚しそうであった。
つ、と舌を彼女の性器に這わせる。
熱い、蕩けきった彼女の性器は完全に受け入れる状態にあった。吸い尽くすようにそれをちゅるちゅると舐めると、抵抗する気があるのかないのか、彼女が嬌声を漏らす。
同性だからこそ、私は彼女のいい所を知っていた。熱い蜜を生むその壺の上に付いた突起を舌で転がした。
直接的な快感に彼女の身体はぴくりと跳ねる。
皮の上から硬くなったそれをつんつんと突っつくと、腰をはね上げ、更に足を開くのだ。
舌を柔らかく保ったまま、ちゅ、ちゅ、とその突起を舐めあげると、今日一番の嬌声を発した。
恥ずかしそうに枕を抱えるものだから、私は蜜壷の中に指を押し入れ、ぐ、とお腹側に倒し、彼女の急所の皮の中に舌を押し入れる。
声にならない嬌声が枕の中に消えてゆく。
だが、彼女の性器は嘘をつけないようだった。
きゅう、と私の指を締め付けると、だらしなく奥からは壊れた蛇口のように蜜を吐く。
びくびくと腰を持ち上げ、震える様は、まるで絶頂を隠しきれていない。
これでは、気持ちいいと伝えているようなものだ。
それに気を良くした私は、彼女のナカに入る指をもう一本増やした。
達したばかりの彼女の胎内は更に快感を受け取りやすいようで、うねうねと指を締め付ける。
枕越しでも、消しきれてない美しい声が聞きたくて、私は更に奥を犯した。
無理やり枕を退けると、ちゅるちゅると口内を吸う。彼女に似た控えめな舌は、遠慮がちに私の舌に絡まった。
他の人とは散々やり慣れたその行為のはずなのに、感じたことがないくらい、口の中で混ざる唾液が愛おしい。
私が男性だったら良かったのに、そう思わざるを得なかった。この、受け止める体制が整った蜜壷に思い切りぶちこんでやりたい。
だけど、私にはそのモノがないのだから仕方ない。
そう思った矢先だ、私の股間にはお腹に付きそうな程硬さを持った陰茎がぶら下がっている。
いや、勃ちあがっている。
普通なら、その異常事態に困惑するのかもしれないが、不思議とそれが当たり前のようにおもえた。
そして、その次の瞬間には欲望のまま彼女の狭い場所へと入り込む。
彼女の顔は困惑と快感に歪んだ。
クラクラする程に、ずちゅずちゅと性器が出入りする音が隠微である。
彼女と私の内蔵同士が擦れ合い、快感を産む。
彼女はただ快感を追い求めているのだろうが、きゅうきゅうと私の物を締め付け、本能が子供を作る為に中に精子を強請っている。
その事があまりに私の情欲をかきたてるのだ。
いますぐ、中に私の遺伝子をぶちまけて、この女を私のものにしてしまいたかった。
どれだけ、倫理的に、世論的にそれが間違っていたとしても、片手で彼女の髪の毛を鷲掴み、片手は乳房を掴み、汚してやろうという気概だけの腰を動かす。
早く、早く、彼女の中で果てたい。
こうして女性を正常位で犯したのなんて初めてのはずなのに、本能的に快感を掴み取るために彼女の腹に腰を打ち付ける事が容易だ。
そして、射精感が込み上げてそのままピストンを早くすると、私は彼女の中に精を放っていた。
運動量は私のキャパシティを超えていたようで、そのまま彼女の上へ項垂れると、ぱくぱくと脈打つ心臓が重なる。
感じた事のない幸福感、そして重なるだけのキスをした……………。
はずだった。
次に私が見たのは、旅館の天井。
隣には服を着たままの彼女、私の下着は確認せずとも分かるほどに湿気を帯びている。
そうか、夢だったのか。
もう薄明かりが指している旅館の中で軽く伸びをすると、その都合のいい夢の余韻を楽しんだ。
もう少し経てば、彼女が起きていつも通りの笑顔でおはよう、と呟くのだろう。
そう、いつも通りの笑顔で。
その事に安堵しつつ、苦笑を浮かべる。
いつか、いつも通りの笑顔じゃなくて、羞恥に顔を染める笑顔で言うおはようが聞きたい。
そう、決意すると私はそっと彼女の頬にキスを落とした。